関節リウマチ・膠原病患者さんの食事・栄養について
院長コラム
「リウマチに良い〇〇」、「関節の痛みが和らぐ〇〇」など、健康食品、サプリメントなどの様々な広告を目にしますが、科学的に効果と安全性が証明された関節リウマチ、膠原病に対する健康食品、サプリメントはありません。
普段の食事をきちんと食べる習慣をつけ、バランスの良い食事をとることが重要です。
関節リウマチ患者さんの食事・栄養
*EPA、DHA、α-リノレン酸
これらの成分はn-3系多価不飽和脂肪酸とよばれ、炎症を起こす物質の産生を低下させ、関節の炎症を抑えるのに効果があるとされています。
EPA、DHAは青魚にα-リノレン酸はしそ油、亜麻仁油などの植物性の油に多くふくまれています。
関節の炎症を抑えるためにこれらの食品がすすめられます。
栄養素 | 多く含む食品 |
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EPA | いわし、さば、まぐろトロ、さんま、ぶり、かつお、養殖はまち |
DHA | まぐろトロ、養殖まだい、ぶり、さば、養殖はまち、魚の目のまわりの脂肪 |
α-リノレン酸 | くるみ、大豆、しそ油、えごま油 |
*ビタミンD、ビタミンK、カルシウム
関節リウマチの患者さんは、骨粗鬆症になる確率が高いと言われています。
カルシウムは骨の材料になるため重要ですが、食事からとったカルシウムを消化管で吸収するときにビタミンDのはたらきが必要です。また、ビタミンDやビタミンKは骨の形成を促進するはたらきがあります。
ビタミンDは主に魚介類や干ししいたけなどに、ビタミンKは緑黄色野菜、納豆、肉、卵などに多く含まれています。
栄養素 | 多く含む食品 |
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カルシウム | 牛乳、チーズ、ヨーグルト、干しえび、わかさぎ、水菜、菜の花、モロヘイヤ、ひじき、豆腐 |
ビタミンD | さけ、さんま、しまあじ、きくらげ |
ビタミンK | 納豆、春菊、ほうれん草、おかひじき、大根の葉、かぶの葉 |
*メトトレキサート(MTX)内服中の関節リウマチ患者さん
メトトレキサートは関節リウマチ治療の第一選択となる重要なお薬ですが、葉酸を多く摂取しすぎるとメトトレキサートの効果が弱くなる可能性があります。
葉酸を多く含む食品としては、ほうれん草、アスパラガス、ブロッコリー等の野菜類、枝豆、納豆などの豆類、うなぎ、うに、いくらなどの魚介類、その他、くるみ、いちご、レバーなどがあります。
通常の食事として摂取する量では、問題ないとされていますので過度に神経質になる必要はありませんが、極端に同じものを食べ続けるのはおすすめできません。
食事以外の、サプリメントや青汁、その他の健康食品については葉酸の量が通常の食事より多い可能性があるため、おすすめできません。主治医と相談された方が良いでしょう。
メトトレキサートは肝障害を起こす可能性があるため、メトトレキサート内服中はお酒はあまり飲まない方が良いとされています。
少なくとも、メトトレキサートを服用する日は禁酒とするようつとめてください。
膠原病患者さんの食事・栄養
膠原病患者さんは女性の方が多く、骨粗鬆症予防の食事はすすめられます。
全身性エリテマトーデスや強皮症で腎病変がある場合は塩分制限などの管理が必要となります。
強皮症や混合結合組織病で逆流性食道炎の合併がある場合には、油の多いもの、辛いもの、甘いものを避ける内容の食事がすすめられます。
炎症をおさえやすい食事
食事の内容によっては、炎症を起こしやすかったり、逆に炎症をおさえやすい食品・食材があります。
加工食品(ハム・ベーコン等)やスナック菓子等の食品、ファストフード、アルコールの摂取が多い食生活を続けていると食べ物による炎症が原因で諸症状の回復を遅らせている可能性があります。
まずは普段の食事を見直して、炎症をおさえやすい食事を取り入れることによって、症状が軽くなる可能性があります。
推獎食品・食材 | 目安量 | ポイント | |
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穀類 | 玄米、五毅米 全粒粉パン、全粒粉パスタ ライ麦パン | 玄米・五毅米(180g) 全粒粉パスタ(100g/束) 全粒粉パン(6枚切り1枚) ライ麦パン(6枚切り1枚) | ・白米より精製度の低い玄米等を選択する ・白パンやピザ、パスタ等の摂取を減らし、 小麦(グルテン)の摂取を控える ・芋類は、1日20g程度にし、アク抜きをする |
果物 | バイナップル、マンゴー りんご、チェリー、みかん ブルーベリー、いちご アボカド | バイナップル(100g) りんご(1/2個) みかん(小2個) いちご(8粒)、アポカド(1/3) | ・糖質多く含むため、食べ過ぎに注意。1人前 量を目安に1日1回摂取する |
魚介類 大豆食品・卵・肉 | 鮭、さば、イワシ 豆腐、納豆、チーズ 鶏肉(むね肉、ささみ) | 鮭・さば・イワシ(70g) 豆腐(80g)、納豆(1パック) | ・魚介類を習慣的に摂取する(2~4回/週) ・肉は、赤肉より鶏肉を選択し皮は取る ・卵の摂取量は週に4個未満を目安にする ・チーズは低脂肪のものを選択する |
乳 乳類 チーズ | 低脂肪牛乳 低脂肪ヨーグルト アーモンドミルク オーツミルク ココナッツミルク チーズ | 低脂肪牛乳(180ml) 低脂肪ヨーグルト(120g) 植物由来ミルク(180ml) チーズ(カッテージチーズ、 リコッタチーズ) | ・牛乳、ヨーグルト、チーズは低脂肪のもの ・植物由来のミルクを選択する |
油脂類 ナッツ類 | ◆油脂類 オリーブォイル、ごま油、 なたね油、大豆油、 サンフラワー、亜麻仁油、 コーン油、魚油 ◆各種ナッツ類 ピーナッツ、アーモンド、 くるみ、カシューナッツ、 ピスタチオ、チアシード | ◆油脂類 油脂類1回あたり8g (大さじ1/2) ※1日あたり20g(大さじ2弱) ◆各種ナッツ類の1日適量 (約100〜150kcal※手のひら1杯分) ピーナッツ(20〜25粒) アーモンド(20〜25粒) ミックスナッツ(25g) チアシード(大さじ2/3) | ・マーガリン、ショートニング、 動物性油の使用を控える ・ファストフードの揚げ物は避ける (トランス脂肪酸) ・チアシードは加熱しすぎに注意する |
野菜・海藻 きのこ類 | ◆綠黃色野菜 ほうれん草、にんじん、 プロッコリー、ケール、 トマト、かぼちゃ等 ◆淡色野菜 キャベツ、玉ねぎ、大根、 長ネギ、生姜、にんにく等 ◆海藻・こんにゃく きのこ | ◆緑黄色野菜と淡色野菜の組 み合わせ(350g) おろし生姜(小さじ1/2) ◆乾燥わかめ(5g)、 乾燥ひじき(5g) ◆しめじ・エリンギ・ えのき・しいたけ (各種頭バック約100g) | ・アクが多い野菜(ごぼう、れんこん、なす、芋類)はアク抜きを行う |
香辛料類 | ターメリック 黑胡椒 味噌 | ターメリック(少々) 黑胡椒(少々) 味噌(大さじ1) | ・市販のソースをひかえる |
嗜好飲料 その他 | 赤ワイン | 赤ワイン(125ml/杯) | ・酒類の摂取は赤ワインを推奨する ・ジュースは控える |